問題・1

 

外傷性の大腿骨頭壊死症患者が、しばしばぶつかる問題及び対策
 

 

     本人は交通事故が元で大腿骨頚部骨折となり、引き続いて大腿骨頭壊死を発症して5年余り、入院治療し、完治してから3年
  余り経ちます
    外傷性の大腿骨頭壊死症の場合は、ケガをして続いて壊死を発症してから、入院して完治するまでの期間が果てしなく長く
 かかり、そしてそれはまたとてつもなく辛い歩みです。
 この過程の中で、患者は肉体的精神的な二重の大きな困難に耐え、そしてたくさんの問題に直面しなければなりません。こう
したことをどのように克服し、如何にしてより良く解決していくか、この難問を解決することは検討するに値します。
 ここに私が身をもって知ったことを紹介し、皆さんの参考に供します。もしかしたら参考になるところがあるかも知れませ
ん。
皆さんが理解し易いように、私はこのプロセスをおおよそ4つの段階に分けて述べていくことにします。

   

     第一段階:ケガ・・・・・手術或いは手術によらない治療・・・・・骨折の癒合

   第二段階:骨折の癒合・・・・・壊死の兆候の出現・・・・・壊死の確定診断

   第三段階:壊死の確定診断・・・困難な闘病期間・・・・・病院での治癒

   第四段階:病院での治癒・・・・退院後の管理・・・・・本当の完治( 二度と骨頭の圧潰を心配しなくても良い状態 )

 

 

 

第一段階:ケガ・・・・・手術或いは手術によらない治療・・・・・骨折の癒合

   [時間]

     ケガをしてから骨折部が癒合するまで、およそ3〜6ヶ月の時間が必要で、一様ではありません。

   股関節のケガには、股関節頚部骨折や骨頭の骨折などの様々な骨折、そして臼蓋の骨折や股関節脱臼などが含まれます。

 そうしたケガは血管の断裂をもたらし、血流を阻害してその流れを止め、最後には大腿骨頭の虚血性壊死を発症させる可能性があるのです。

    突然起こる思いがけないケガに患者は生理的心理的痛手を被って、身体はそのショックのただ中にあります。この段階で

  は主要には以下の問題があります。

   [問題]

    1.痛みがあること 2.機能障害に伴う活動制限があって、行動が不便なこと 3.入院中は生活が自分の思うようにで

  きないこと 4.焦りや予後の心配もあり、挫折感に囚われたりすること 5.病人として気持ちを切り替えることが難しい

  こと、見舞い客への応対のこと 6.便秘になったり痩せて、身体がひ弱になること 7.どのように病に関連する知識や、

  効果的なリハビリの方法などを身につけるか

   [対策]

    思いがけずそうなってしまったからには、現実に正面から向き合わなければなりません。じたばたしても仕方が無いのです。

  それまでの仕事や生活の手はずをちゃんとして、心の荷物を全部降ろすことです。

  できるだけ早く病人としての気持ちに切り替えて、気持ちを落ち着けて療養すること、そして積極的に治療と看護に協力し

  ましょう。

 

1.医者の話を聞いて、自分の病状と治療計画についてしっかり理解し、保存的治療にするか手術にするか、慎重に判断しま   しょう。

  手術が必要な人は、術前の準備をしっかりとして、生活用品なども全て準備しておきます。手術後は傷口の痛みに耐える のも難しく、痛み止めの服用や、ボルタレン座薬を使っても良いです。

  ここでついでに、私が作った便利なショートパンツを紹介しておきましょう。ショートパンツの患側で外側に切れ目を入 れておくんです。そして4本の柔らかくて細長い布切れで括って結んでおきます。こうするとベッドで横になっている時で も、傷口を観察したり、薬を取り替えたり、脱いで洗ったりするのに便利です。注1

  それから女性の古いパンストをはさみで切って、スパッツを作りました。膏薬を貼る時なんか、これを履いているととて も快適になりますよ。注2

  注1、注2:画像が無くて、文章だけなので、どんなものか、細かいところは具体的には分かりません。

 

 

    2.この第一段階では最も大切なのは生活看護です。患者は絶対にベッドに横になっていなければならないので、生活面で
    全く自分では管理することができません。
   周りの人の世話が必要で、家族の心配りが大切です。細かく注意が行き届くように、患者も家族もできる限りお互いに
  理解し合って、一緒に対処しましょう。
   患者はベッドで横になっていなければならないので、動きも不自由です。食事やトイレも、いつもならなんでもないと
  思うようなことでも、助けがあってやっとできるようになります。それからひとたび入院すると3ヶ月はかかるので、あ
  れこれと気をもんで気が晴れず、感傷的になりがちなものです。
   私のコントロール方法はこうです。: 前の方を見るのではなくて、後ろの方を見るんです。どう言ったら良いか、先
  のことを考えたら3ヶ月か、もっと長い期間横になっていなければならないって分かるじゃないですか。そう思うとすご
  く恐ろしいですよ!
  長期間毎日心配ばかりしているなんて、本当にもう想像したくありません。それならいっそのこと、大変な毎日がずっと
  続くなんて考えないことです。いつも過ぎた1日のことだけを考えるのです。その日暮らしみたいにして、その日のこと
  だけを考えて事を運ぶのです。窓を開けて新しい1日が来たことを喜び、窓を閉じて1日を送るのです。こんな風にして
  入院した時からの日々を数えていたら、気持ちも晴れやかになってくるでしょう。
    
        ケガや病気でふせったら1日が1年のように長くて辛い、そんな時間を費やすようになるので、最初の頃はやっぱり
    テレビが一番良いです。
  テレビの連続ドラマを毎日2話ほど見て、気を紛らわせるんです。ドラマの展開に一喜一憂するんですよ。自分の好きな
  チャンネルを選んでね。DVDビデオを見るのも良いですよ。だけど長い時間ずっと見ていることはできませんから注意
  しなければいけません。目を疲れさせてしまいます。
  最初の頃はテレビで、その次には長い日々の中で本を読むことが私の一番好きだったことです。私はケガで家に3年半い
  ましたが、私が最も満足したのは、その長い期間をまるまる使って本を読めたことです。

     

3.患者は必ずベッドに横になっていなければならないので、身体を動かすことも減って、食欲も無くなって、腸の動きも弱
 ってしまい、すぐに便秘になってしまいます。大部分の人はこんな経験があるみたいですね。
  手術の後1週間で大便が減ってきて、排便が困難になり、お腹の調子が悪くなります。
 対処法 : 朝、蜂蜜を溶かした水や、ごま油を溶かした水を飲む。野菜やバナナをたくさん食べて食物繊維を摂る。お腹
 をマッサージする。
 薬を使う : 果導片、大黄蘇打片、開塞露、便秘が酷い場合は最後には番潟叶を飲みます。注3
  注3:果導片、大黄蘇打片は便秘薬、開塞露は浣腸です。 番潟叶は日本ではセンナと言い、熱帯産のマメ科の低木の葉
     を煎じて、お茶のようにして飲みます。下剤として用います。
 
  左から果導片、大黄蘇打片、開塞露、番潟叶

 

  番潟叶は比較的強い下剤です。病院では一般的に腸の中を綺麗にするために使うもので、便秘が酷い場合には使わざるを
 得ません。
 まず先に少量を沸かしたお湯に浸しておいて飲みます。次の日には軽い腹痛があって、便意を催して排便を促します。1日
 おきに1回服用すれば便秘はゆっくりと解消されます。でも、番潟叶は効きめが強いですから慎重に使わなければいけませ
 んよ。
    長期にわたる便秘は最終的に身体がやせ衰えて、活力をとても損なうものです。
  私はおよそ1ヵ月半の経験の中で、色々な対策、コントロールを通して腸の機能を快復して、正常な便通に向かうように
 なりました。そして食事療法によって体力をゆっくりと快復したんですよ。

 

   4.人生というものは本当に順調なものではなく、不慮の災難などがあると、あなたの身近な人たちみんなの気持ちにも影響
   を及ぼしてしまいます。
    入院している間には親類や友人たちが、たくさん見舞いに訪れて、それがまたとても大きな慰めになります。ですが、ち
   ゃんとコントロールするように注意しなければなりません。見舞い客が多すぎると応対疲れを起こしてしまいます。無理を
   することはできませんよ。病人はもっぱら休んで、静かに養生していなければいけません。
  時が経つに連れて病状が好転し、医者の許可の下に、初めてゆっくりと座る姿勢をとれるようになります。でも、倒れな
 いようにチカラを貸して、手で支えてくれる人が必要ですから注意してください。そうやっても頭がくらくらして目まいが
 するかも知れません。座っている時には、骨頭にも大きな負担が掛かっているので、数分間しか耐えられませんよ。
 3ヶ月ほど経つと車椅子に座れ、初めて立つ練習となります。松葉杖を突いて患側の脚を床に着くことはしません。座位の
 時と同じように助けてくれる人が必要で、長時間やることはできません。

 

5.患側の脚の筋肉トレーニングのことです。実はケガをしてベッドに横になって、半月もすると患側の脚の動きも制限され
 るので、筋肉はすぐにたるんできて、廃用性の萎縮を避けることができません。
 なので、筋肉トレーニングをしていかなければなりません。筋肉を伸ばしたり、収縮させたりする運動ができます。分かり
 易く言うと、横にした脚の位置を変えないようにしておいてから、チカラを入れて筋肉の収縮運動をして、その後水平運動
 などをしても良いです。
 何ヶ月かして歩けるようになったら、自分で3〜5kgの砂袋か米袋を作って、くるぶしのところに付けて脚を上げるなど、
 大腿四頭筋のトレーニングや、ベッドの上で真っ直ぐ伸ばした脚を高く持ち上げるなどの、骨頭に大きな負荷をかけないト
 レーニングをしても良いですよ。
 2年ちょっとの間、綺麗な歩容で歩くことができず、私の脚は3.5cmも細くなってしまいました。次第に萎縮していく
 脚を見ていると、言いようの無い物悲しさに囚われてしまいました。今に至ってもこの脚は、良い方の脚と同じようになる
 ことができていないのです。
 
6.私は股関節のケガ、特に大腿骨頚部骨折の予後に併発する症状である、大腿骨頭壊死症などに関連する医学知識を勉強し、
 理解してきました。壊死を予防するための治療や看護、例えば熱いお湯に脚を浸して、血行を良くして経絡を通じさせると
 か、高圧酸素治療をして骨折の癒合を促進させる方法などです。

 

 

 

 

第二段階:骨折の癒合・・・・・壊死の兆候の出現・・・・・壊死の確定診断
   [時間]
    骨折が癒合してから壊死が出現するまでは、2年以内が最も発生し易いと言われています。
 外傷性の大腿骨頚部骨折から3ヶ月ほど経つと、骨折部はゆっくりと癒合してきます。一般的には半年ほど経てば少しずつ負
 荷をかけられるようになり、骨梁は負荷を受けた方向に成長し、増えていきます。
  但し、大腿骨頚部骨折、中でも大腿骨頚部内側骨折の場合は、2年以内に容易に虚血性大腿骨頭壊死症を発症するのです。
 股関節に体重を乗せたり、杖の使用をやめたりすることには慎重でなければなりません。
 骨折が癒合する状況は患者一人ひとりによって違いがあります。医者の指導の下で慎重に対処していくことが必要です。
    
 [問題]
 この段階での主な問題 : 1.いつから股関節に体重を乗せ始め、いつ杖をはずすか 2.抜釘に適したタイミング 
3.壊死の兆候、そしてどのようにして診断を確定するか
   
  [対策]
  この段階では、もし壊死が発生していなければ、病状は落ち着き、ベッドから出て車椅子にも座れ、松葉杖を突いて立て
 るし、生活面でもいくらか自分で管理できるので、早く杖の使用をやめて、職場に戻れるように待ち望んでいることでしょ
 う。
 1.杖の使用をやめるタイミングとしては、6,9,12という考え方と、6,12,15という考え方があります。つま
  り、6ヶ月経つまでは松葉杖、9ヶ月立つまでは一本杖を使用し、12ヶ月経ってから杖の使用をやめる。或いはまた、
  6ヶ月までは松葉杖、12ヶ月までは一本杖を使い、15ヶ月経ってから杖の使用をやめるという考え方です。
    患者一人ひとりの骨折の癒合の進み具合は同じではありません。個々の快復の状況を観て決めることが必要です。
    私は今考えると、やっぱりもうちょっと控えめにしておけば良かったと思います。恐らく知らず知らずの内に、既に
   骨頭の壊死が始まっていたのに全く気がつかなかったのでしょう。
  それからまた、杖を使うのは絶対に松葉杖にした方が良かったと考えています。その方が杖の使用をやめた後、歩く時の
  歩容の快復のためになるのです。長期間一本杖で歩くことは、たぶん歩く時に身体の傾きを引き起こしてしまうでしょう。

 

    2.抜釘の問題 : 骨折の癒合が良好で壊死も無いのなら、一般的には1年から2年以内に抜釘が可能となります。
   但し、専門家の間では統一的な見解が無いようです。ある専門家は抜釘は遅い方が良いと言うし、ある人はあまり遅く
  てはいけないと言っています。結局最後はやっぱり、個々人のレントゲンなどが示している、骨折癒合の状況に基づいて
  決めることになります。

 

 3.壊死の兆候:患側の脚が寒さに弱く、冷える。寝る前には脚がいつまでも冷たい。これは一番最初に現れる不快な感覚
  です。続いて4つの痛みが現れます。:太ももの外側の痛み、股関節の痛み、腰の痛み、膝の痛みです。
  私の場合、太もも外側のかすかな痛みが一番早く現れました。始めはたまに短い時間、かすかに痛むだけでしたが、時が
  たつの連れて痛みの回数はだんだんと増えてきて、痛む時間も長くなったのです。4つの痛みは、全ての人に必ず全部あ
  るとは限りません。
   壊死の兆候が現れたばかりの時は、レントゲン写真でははっきり確認できません。MRIでようやく早期の確定診断が
  できます。
    注意:一般的な材質の釘が体内にあるとMRI検査は難しいですが、チタン製の釘であれば可能です。
 
   虚血性大腿骨頭壊死の早期の症状には一つの型があるわけではないし、中でも外傷性ではないステロイド型、アルコー
  ル愛飲型で早期の大腿骨頭壊死の人だったり、専門の診療科を受診しなかったり、医者の診断経験が不足していたりする
  こともあって、往々にして診断の見落としをしたり、椎間板の病気や股関節炎、膝関節の病気などに誤診したりし易いの
  です。
  なので、大腿骨頭壊死症に関する知識を広報し、広く行きわたらせることがとても必要なのです。それが早期発見、早期
  治療のためになり、良好な予後を得ることのためになるのです。発見が遅いと治しにくくなります。
  それに、大腿骨頭壊死症を発病する確率は高く、聞くところによれば健康な人の3%であり、大腿骨頚部内側骨折の場合
  の発病率はもっと高いのです。
 
     もう一つの問題としては、壊死の疑いがあっても客観的で正確な診断を下す方法が無いことです。薬を使うか使わない
    か?使うとしたらどんな薬を使うのか?
   私はやっぱり薬を使った方が良いと思います。中医学によると、個々の事例に基づいて病変を判断し、それによって治
  療の方針を決めて措置すると言っています。注4 
   私は三補一活治療法の原則に基づいて、中医薬を服用するのが間違いないと思います。注5
     注4、注5:「 弁証施冶 」というのは中医学の用語です。 理 ・法 ・ 方 ・ 薬の理論を臨床に運用する手段
           で、中医学における基本的な考え方です。 「 三補一活 」も中医学の用語です。 三補は「 補気
           ・ 補血 ・ 補腎 」、一活は「活血化淤通脈 」を表します。 身体のリズムを整えると共に、血(ケ
           ツ)を浄化して、その流れを良くして病変の改善を図る考え方です。詳しく知りたい人は自分でお勉
           強してください。

 

   壊死の兆候が現れたら、安易に杖の使用をやめることは絶対にできません。股関節に負荷をかけることはできませんよ。
  骨頭の形さえ保っていれば、治療はいくぶんかたやすいはずです。もし不注意から負荷をかけ続けて、一旦圧潰したら治
  すことが難しくなります。圧潰した骨頭はもう元通りになることはできません。子供は例外ですが。

 

  4.この期間に壊死の兆候が現れると、中でも大腿骨頭壊死症の知識を理解している人は、心理的に急激な変化を生じるも
    のです。痛みが一旦出ると気を腐らせ、すぐに気持ちが激しく落ち込みます。大腿骨頭壊死が進行しているのかどうか、
    心配になるのです。
    しかし心配しても恐れても、それは無駄なことなのです。大切なことは急いで医者を探すことです。レントゲンを撮った
    り、CT検査或いはECT検査をするのです。注6 
    一番確かで間違いないのはMRI検査です。とりわけ大切なことは専門医にしっかりと診てもらって、1日も早くはっき
   りとした確定診断がなされるように努力することです。
   注6:渦流探傷試験と言います。
      渦流探傷試験は、電磁誘導試験とも呼ばれており、試験コイルに電流を流して試験体を通過させて、きずがあ
      った場合の電流の変化により、きずの検出を行う手法です。